Doctors Journal Vol.8
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24できるようになりました。一方、当時B型肝炎治療に使われるようになったインターフェロン(IFN)は、B型肝炎などのDNAウイルスよりはRNAウイルスで効果が期待できるのではないかと考えられC型肝炎治療での臨床試験が始まりました。そして、当時千葉大学医学部に居られた小俣政男先生(東大名誉教授で現在山梨県立中央病院理事長)が、「IFN投与後に患者血液中のHCV RNAが少なくなり、肝炎が改善した患者ではHCV RNAは検出されなくなる」という結果を発表されました。これを機にPCR法を用いたHCV RNA検査試薬の開発はロシュ日本法人からグローバル本社に提案され、その後、小俣先生を始め日本の肝炎専門医の方々のご支援とご指導の下に、HCV RNA量測定検査の開発、そして改良と言う約10年に渡るプロジェクトが始まりました。私自身も、検査試薬の開発、日本での臨床試験、導入と普及に深く係わることになりました。 以前から肝炎患者が多い日本では、IFNによるC型肝炎治療が非常に積極的に実施され、より効果が発揮でき安全で効率性に優れた抗ウイルス治療を求めて多くの臨床試験が実施されました。ここで重要な役割を果たしたのがHCV RNA検査でした。C型肝炎患者のINF治療では同じ処方でも、治療中及び治療後の血中HCV RNAを検査することで、ウイルスが消え完治する患者、一旦は改善されても再燃する患者、最初から全く効かない患者に大別されることが分かりました。このようなIFNの治療効果は患者が感染しているウイルスの遺伝子型あるいは治療前の血中ウイルス濃度(HCV RNA量)と緊密な関係があることが判明しました(図2)。その後これらHCVの遺伝子検査の結果がIFN治療の効果予測、効果判定に活用され、より効果の高いIFN製剤の開発や処方戦略を生み出す重要な検査となりました。当初著効率が30%程度であったC型肝炎での抗ウイルス治療ですが、現在はペグインターフェロンとリバビリンの併用投与で80%の患者で治療効果が期待できるまでに改良されました。これは、薬剤と検査が一体となって、治療戦略を進化させる典型的な事例となりました。【輸血用血液のスクリーニング検査の開発:世界一安全な血液を目指して】 1981年にアフリカ・カメルーンで最初に報告されたエイズウイルス(HIV)感染症は、その後非加熱血液製剤での感染が問題となり、日本でも1989年に大阪と東京で薬害訴訟が起きました。HIVやHCVは血液を介して感染する重篤な疾患であり、輸血用血液に関してはB型肝炎ウイルス(HBV)、ヒト成人T細胞白血病ウイルス(HTLV)同様に免疫学的な検査を開発後速やかに導入することで、輸血用血液の安全を限りなく担保する体制が整えられていました。しかし、HBV、HCV、HIVなどの感染症では、感染初期の一定期間は免疫学的検査では陰性と判定されることが分<図2>血中HCV RNA量と抗ウイルス治療効果の関係(ロシュ社データより)HCV RNA検査による抗ウイルス治療効果の予測/判定が可能となったことで、より効果の高い抗ウイルス療法の開発が促進されたIFN 投与前ウイルス量IFN単独24週治療(2000年頃)N=130 CR:69(53%) NR:61(47%)1b型ウイルス2a/2b型ウイルス1b型ウイルス2a/2b型ウイルスPeg-IFN+Ribavirin 併用48週治療(現在)N=71 SVR:56(79%) NSVR:15(21%)(Log IU/mL)CR/SVR:著効例 NR/nonSVR:無効例SVR n=42 non SVR n=15 SVR n=14 non SVR n=0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 > 7.8 Log IU/mL CR n=34 NR n=41 CR n=35 NR n=20 N.D. 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0

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