Doctors Journal Vol.8
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39[連載]医療機関向け融資審査の要所 Part.1株式会社 スペースワン 〒151-0053 東京都渋谷区代々木1-30-15 天翔代々木ビルS507Tel: 03-5351-1650【事業内容】財務・資金繰改善コンサルティング、事業再生、銀行交渉アドバイス(中小企業及び士業向け)株式会社スペースワン 代表取締役徳永 貴則氏ありませんが、一般企業がモノを売ったり買ったりして利益を稼ぐ事業とは違い、患者を相手にしている事業であることから、公共性が非常に高く社会的な貢献度も高い性格を有しています。なので、ビジネスだけの観点に捉われたア ドバイスに終始するのが難しいといったイメージがあります。マーケティングにしても、地域の想定患者数、ライバル病院の動向なども医療業専門のコンサル会社からの資料を鵜呑みにせざるを得ない傾向があり、こと収支計算にしては、なかなか銀行本位で進めることが難しい一面があります。②専門性の理解 銀行員の特性として、業界の知識に「広くは知っているものの、浅くしか知らない」があります。銀行員は多くの業種との接点はあるものの、なかなか一事業に対して深い知識や経験に乏しい傾向があります。ひとつの取引先に対して物理的に時間をかけられないのが理由にあります。特に医療業に関しては、内科、外科、耳鼻科、歯科などなど高い専門性を有した事業であり、先述したように国の政策によって大きく左右されることからも本部にて専門チームを結成して対応しているのが実情なのです。③設備の妥当性 医療業には多くの設備が必要なのは周知の事実ですが、いったいどのくらいの設備でいくらの設備が妥当かについては専門的な知識を有しておりません。 設備の妥当性を問うのは、自己資金と資金調達額、そして将来の収支計算から逆算した結果です。つまり、「いくら設備投資に回すのが妥当か」を審査しているだけで、この設備があるから患者数の増加が見込めるような考え方はなかなか出来ないということです。設備の中身等に詳しいのは、「福祉医療機構」などの医業向け融資の専門機関ぐらいではないかと思います。 つまり、設備の性能や中身についての妥当性はこちら側から理論武装して金融機関に説明する必要があります。④開業医が数字に強いかどうか 独立開業される先生方は、一般企業で言えば「社長」に当たります。金融機関の交渉は最終的には「社長」が行わなければならなりません。 私は、病院のクライアントとの接点が多々ありましたが、医業法人クラスになれば、事務長や経理担当者がいるケースもありますが、個人開業医のケースでは先生自身が交渉に当たらなければなりません。とはいっても数字になかなか疎い先生も多いのは当然です。よくあるケースで、先生自身なかなか説明が難しいことから顧問の税理士に説明を丸投げしていることをよく見かけます。確かに、数字の説明はプロからやってもらったほうがいいケースもありますが、最終的には融資を申し込んでいる本人の口から語ってもらう必要があり、金融機関は本人の言葉を待っているのです。 「私は数字に関しては分からなので」の一言で片づけてしまうと、「当事者意識が少ない」印象を与えてしまうことになり、決してご自身にプラスには働かないことを認識してください。◆ 今回は、医療機関融資の要所と題した1回目として金融機関がなぜ医療機関向けの融資を難しいと感じるかについてポイントを述べさせて頂きました。難しいと感じる点をいかに金融機関に分かりやすく説明してあげるかが融資の近道なりますので、念頭に置いて頂けたらと思います。次回は事業計画書の作成方法について述べさせていただきます。【プロフィール】1972年生。明治大学政経学部卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に入行。法人新規融資先の開拓業務を中心に、本店融資部での勤務経験あり。2000社以上の融資案件に携わる。銀行在職時より医療関係の融資案件の経験も豊富にあり、医療系事業再生の経験もある。2012年、株式会社スペースワン設立。主に資金調達、事業再生のアドバイス業務を行っている。主な著書「リスケの出口が見つかる!資金繰りと銀行交渉の全て」同友館

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