ドクタージャーナル11号
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22です。寺内 まず最初に先生から、新規開業の場所を神奈川県内で探してほしいとのご依頼を受けました。しかし私どもの経験では神奈川県の横浜の各都市部では開業後の立ち上がりがとても悪いと考えておりました。理由は、既存のクリニックで既に飽和状態であることと、開業後10年前後の盛況医院が多く大変競合が激しいので新規開業においては消耗戦になる傾向にある点です。そのような中で、ご希望の地域ではなかったのですが、大手ゼネコンさんの商業施設内の物件をご紹介させていただきました。―ドクターの開業にとって重要な要素とは何でしょうか。寺内 私は開業のお手伝いをさせて頂くとき常に、その先生の「売り」は何ですかとお聞きします。榎本先生の場合、既に前職のクリニックで経営者として苦労されてきたという経験が「売り」だと思いました。クリニックの立ち上げの時期で患者さんが全く来ない状況から、最後には多くの患者さんが定着されるまでになった、その間のご苦労をお聞きしまして、私はこの期間のご苦労は榎本先生にとって実は非常に貴重な経験になられたのだと思いました。今回はお二人が専門領域をお持ちである。内科診療の経験も十分に積まれている。クリニック経営も立ち上げから経験されている。この両先生で開業されるのであれば、この地のロケーションは問題がないと確信しました。もっとも当初は、あき矢先生はこちらのロケーションでの開業が全くイメージできなかったと思いますが(笑)。 それと、ファミリークリニックということで、小さい子供からお年寄りまで幅広くという診療方針を伺っていましたが、ファミリーといいながらも両先生には、それぞれ専門科のスキルという武器があることが強みだと思いました。最近のクリニックの名称は、専門の診療科に絞りこみ、それを「売り」にするドクターが多いです。そこをあえて、ファミリークリニックという名称にするというのも逆に「売り」の一つになると思いました。―ここでの開業には最初の段階では相当不安を感じられていたとお聞きしています。榎本 私たちは今も世田谷に住んでいますが、こちらの城東地区は全く反対方向になります。ただ、大学の医局の関連病院が足立区や葛飾区、江戸川区に多かったので、こちらの患者さんを診察していた経験がありましたから、全く土地勘が無かったわけではなかったのですが、開業ということでは千住大橋の再開発地は全く考えもしなかったですね。 ショッピングモールでの開業には魅力を感じましたが、この場所に不安を感じていました。どのくらい人が住んでいるのか。これからマンションが建つといっても、それまでは患者さんが集まらないのではないか。それと、高齢者は腰が重く、特に内科の場合、慢性疾患の患者さんは新しいクリニックには来ないのではないか。そんな不安がありました。実際に開業してからも、高齢者の患者さんに関してはまだ少ないですね。そこはこれからの取り組み次第だと思っています。寺内 おっしゃる通り当初、榎本先生はこの地には相当不安をお持ちでした。特に隅田川や荒川という河川で診療圏(商圏)が分断されており、元々の足元人口は多い地域ですが、この場所は再開発地域ということで何も無い更地でしたから、診療圏や住民特性など、相当お悩みになられたと感じました。ですから私のほうでもお薦めできる場所との確信はあったのですが、その後も相当調査を致しました。榎本 調査を進めるとこの場所は、元々は大きな工場があった場所でクリニックが少なく、住民の多くは医療機関が集中している北千住の駅周辺まで行っているという状況でした。徒歩で行くには微妙な距離で特に小児科にかかる患者さんにとっては不便クリニック開業座談会

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