ドクタージャーナル11号
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24ター自らリサーチを行ったというお話は、榎本先生が初めてです。とても驚きました。でもそれはとても重要なことなのです。素晴らしいと思います。榎本 自分の信念や診療スタイルを貫くことも大事ですが、地域のクリニックは、その地域の住民の方々のニーズに寄り添うことが大切だと思うのです。なるべく地域のニーズに柔軟に軌道修正していこうと思いました。それと、前職でも小児科の診療は行っていたのですが、この地で小児科を標榜することに決めてから、再トレーニングしようと思い、知り合いの小児科の先生に頼んで小児科目を再勉強しました。―開業の成否を決める要素は何でしょうか。寺内 開業を支援させていただく立場から申しますと、ドクターの決断力が非常に重要です。それは即断ということではなくて、十分に比較検討されたうえで決断するということで、鵜呑みにしないということでもあります。多くの開業をお手伝いする中で、開業したいのに開業できる先生と開業できない先生がおられます。開業できない先生の多くは、決断できない、客観的に一歩引いて物事を見ることができない方が多いです。開業したいという気持ちだけで終わってしまうケースが多いですね。それは開業後についても同じことが言えると思います。榎本 クリニックの開業に際しては、自分たちだけではできないことも多く、多くの方にサポートしてもらう必要があると感じました。どの人にサポートをお願いするのか、その選択が非常に重要だと思います。私たちのようにショッピングモールでの開業にはメリットもデメリットもあります。それらも含めて誠実に動いてもらえる人を選ぶという人選と、条件を客観的にジャッジする慎重さはこれから開業を考える方には必要だと思います。 開業して1ヶ月ほど経ちますが、今は一安心で自分がイメージしていた理想に近いクリニックができたと手応えを感じています。実は準備段階から時間的に余裕があったはずなのですが、実際には相当タイトで準備も整わない状況で開業になってしまい、最初は相当混乱していました。最近ようやく落ち着いてきましたが、想像以上に患者さんが来院されているということが一番うれしいですね。スタート1か月で、1日平均で40人くらいの患者さんに来ていただいています。今は本当に良い場所を紹介して頂いたと感謝しています。―榎本先生が目指しておられるクリニックについてお聞かせください。榎本 患者さんにとって入りやすい敷居の低いクリニック、診察で患者さんがいろいろなことを質問しやすい診療をおこなうこと、患者さんには最善の診療を尽くすこと、帰るときには、ここに来てよかった。また来たい。と思ってもらえるクリニックを目指しています。 それは別の言葉に置き換えれば、ホスピタリティです。医療施設はホスピタリティを施すところだと思っています。ホスピタリティとは医療だけでなく、受付で待っている間から、診療を受けて最後に会計をして帰るところまでの全てがホスピタリティだと捉えています。それは、まず第一に患者さんにとって居心地のよい環境が提供されて、医療はその中の一部という考えです。そのためには医師の私だけでなく、全スタッフの取り組みが必要です。言葉使い、動作、立ち居振る舞い、目線、笑顔、電話応対、全てが含まれます。常に全員でそこに気を配っていますし、教育も行っています。私にとって、スタッフが患者さんから厳しクリニック開業座談会
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