Doctors Journal 18号
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10DoctorsJournalなって介護施設を運営していることが多いと思いますが、こちらは逆転の発想から生まれたクリニックと聞きました。どのようなことなのでしょうか。長尾 一般的には、外来で診ていた患者さんの通院が難しくなったために、クリニックの先生が在宅医療を始められるというケースが多いと思います。まず医療が先にあり、医療サービスの延長線に在宅医療があるように思われます。しかし、当クリニックは介護施設の患者さんの医療ニーズから立ち上がりました。施設に入居されている方々の高齢化が進むと、病気のリスクも高くなってきます。そうなってくると介護スタッフも安心して介護サービスを提供することが難しくなってきます。そこに安定した医療の力が加われば、患者さんにとっても介護スタッフにとっても安心です。ですから当クリニックの役割は在宅介護のサポートといえます。介護施設の患者さんのニーズに応えるために、逆転の発想から生まれたクリニックです。そこからスタートし、今では施設在宅に限らず、個人在宅まで幅広い地域の在宅医療ニーズに応えています。こんな斬新なクリニックがあるということを知った時は衝撃で、是非ここでぜひ働きたいと思いました。実はこれこそが、私が当クリニックで働くことを決めた大きな理由です。在宅医に求められるものとは藤田 世の中では在宅医療の必要性や役割がクローズアップされています。行政も在宅医療にシフトチェンジを進めています。長尾先生が実際に在宅医療に取り組まれていて、在宅医に求められるものは何だと感じておられますか。長尾 在宅医には、専門の診療科に加えて、患者さんの全ての診療科を診なければならないという総合医のようなオールマイティさが求められます。勿論、自分で分からないことや専門の治療については専門医の協力を頂きます。それと、患者さんに最後の瞬間まで向き合っていかなければならないという難しさがあります。患者さんの最後の瞬間では予測不能なことも多々あります。時には難しい判断も必要とされますので、いろいろな局面に一人で向き合う勇気と覚悟が求められます。私は、最初から在宅医療に進もうと考えていたわけではありませんでした。医大のカリキュラムでも特に在宅医療の科目はありませんでしたから、在宅医療自体をよく知りませんでした。医大生の頃は、最初は外科医を目指していました。担当教授が急逝されなければ、外科医になっていたかもしれません。医師になったら、最初は専門医を目指すのが一般的だと思います。ですから若いうちから、在宅医療に進む医師が少ないのは仕方のないことかもしれません。在宅医療では看取りも多くあります。在宅医療も看取りも家族の協力は絶対に必要不可欠です。また、看取りの機会を通じて家族が再び一つになれるチャンスでもあります。私たちの仕事とは、そのお手伝いをすることでもあると思っています。それも在宅医の役割だと思っています。受験生に医師体験をさせることの意義藤田 常日頃、長尾先生の患者さんに対する真摯な姿勢は、生徒が目指すべき理想の医師像として大変尊敬しております。私どもの予備校では、長尾先生に生徒の医師体験の機会を頂いております。複数の医師が24時間365日常勤し、夜間・休日に於いても当直医による臨時往診を行います。
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