Doctors Journal 18号
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7DoctorsJournal■在宅医療の最前線で活躍するドクターりました。国の医療制度という視点から見ていく方法と、自分で実際の在宅医療の現場に出てみてどう感じるか、との両方に興味があり、結果的には在宅医療の現場に進むことに決めました。現在のさいたま在宅医療クリニックに勤務先を決めた理由のひとつは、埼玉という場所に魅力を感じたからです。埼玉県は従来から医師不足で、当時も今も人口比に対して医師が全国で一番少ない県です。救急外来で積んできた経験を、医療過疎と言われている埼玉の在宅医療で活かしたいという思いでした。残念だった祖父の病院死が在宅医療に進む動機となる藤田 最近の医療行政は、より積極的に在宅医療の整備を進めようとしていますが、未だ受け入れ施設の不足や在宅医の不足など課題も多くあると聞きます。また、20歳代から在宅医療に取り組まれているドクターもまだ少ないように思います。何故長尾先生は、若くして在宅医療の世界に飛び込まれたのですか。長尾 私が在宅医になった大きな動機とは、医大生の時に祖父の死を経験したことでした。祖父は、単なる脱水で入院したのですが、あっという間に肺炎になってしまい、1週間後には亡くなってしまいました。期末試験が終わって私が病院に駆け付けた時には意識はもうほとんどありませんでした。祖父は亡くなる3日前に「自分の体がどうなっているのか分からない。」と母に不安を漏らしていたそうです。体の急変が祖父にとってはとても不安だったのだと思います。その不安を抱えたまま死を迎えてしまいました。何故、祖父を安心させてあげられなかったのか。祖父の気持ちを思うと非常に残念でなりませんでした。高齢の患者さんがいよいよお亡くなりになるという時には、本人が安心して最後を迎えることが一番大切です。患者さんの不安に寄り添うことも医療の一部ではないのか、と思っています。その経験があったので、患者さんには最後を迎えるまで安心して過ごして頂きたい。という思いが強くあります。常に、患者さんに安心してもらえる医師でありたいと努めています。患者さんに寄り添い、話をきちんと聞き、たとえ完治が難しい病気であったとしても、患者さんを最後まで見守っていくという意志を強く持っていたい。一般の外来診療や病院の医師の場合、患者さんに最後まで寄り添うことはなかなか難しいと思われます。しかし在宅医療では患者さんが最後を迎えるまで一緒に寄り添うことができます。むしろ、患者さんのお看取りまで行うのが在宅医療のあるべき姿だと思っています。私はそこにとてもやりがいを感じています。最後の時まで、患者さんの安心感に心を配る。藤田 在宅医として日頃どんなことに留意をされていますか。長尾患者さんが望まれていることや必要とされることを、適切なタイミングで届けることができるか、ということに気を配っています。例えば、在宅の患者さんが病院で受診を受ける際に、担当の在宅医から事前に病院の医師に一本の電話連絡があれば、患者さんはとても安心できます。受け入れ先の病院の医師にとっても、在宅医からの情報は患者さんの診断や治療により有用となります。臨終の時、人間の脳で最後まで残るのは耳の感覚です。お亡くなりになられる方にとって、一番身近な人の声が最大の安心となります。声を掛けたり手を握ったりして、自分は一人ではない、ここに居てもよいのだ。という安心感に包まれることが※埼玉県は人口1000人あたりの医師数が1.48人(全国最下位)※全国平均は2.31人(医師・歯科医師・薬剤師調査平成22年12月末厚生労働省より)

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