Doctors Journal 18号
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8DoctorsJournal大切なのです。このようなことをご家族に事前に伝えておくと、ご本人は安心して穏やかに最期を迎えることができ、呼吸の変動が起きてもご家族は動揺せず慌てずに穏やかなお看取りができます。しかしそのためには医師と患者さん、それにご家族との間の信頼関係が必要です。藤田 患者さん本人が望んでいないのに延命措置が施されているというケースや、自宅での最後を望んでいたのに病院で亡くなるというケースも多いですね。長尾 救命すべき命と見守っていくべき命を分けていくことも必要だと思います。私が沖縄で在宅医療に携わっていた時に、ある在宅の患者さんの救急コールに対して、救急隊と在宅医である私、搬送先の病院の医師とで電話によるカンファレンスを行い、結果的に救急搬送せずご自宅でお看取りしましょうということになりました。沖縄では救急隊が到着しても病院に搬送する前に、まず在宅医に連絡が入り、それから指示を仰ぐという地域の救急医療の新しい連絡網が構築されています。これは非常に素晴らしい連携だと思います。在宅医療における私たちの役割とは、介護と看護と医療をどのように連携させ一つにまとめ、その中心に患者さんを置くかということです。スタッフ向けの勉強会などでよく、「患者の患という漢字は、串に心が刺さると書きます。医療の仕事とはその串を心から抜くことです。」という話をすると、皆さんとても納得してくれます。必要に応じて終末期の緩和ケアも行います。グループに緩和ケアの専門医もいますので連携を取りながら対応したり、私自身も緩和ケアの勉強会に参加したりしています。藤田 長尾先生は、よくスタッフや周りの方への感謝を口にされます。どのような思いからなのですか。長尾 私は、お看取りでご家族の方から「先生の声は分かるみたいで、笑顔になるのですよ。」と言われることがあります。それはとても嬉しいことです。患者さんやご家族の方が安心して笑顔でいてもらえると、私も素直に嬉しいのです。そのように言って頂けることはとても有難いとも思います。でも私がそんなふうに言ってもらえるのも、それまでに介護士やご家族の方の献身的なケアがあるからなのです。医師一人で在宅医療はできません。介護があっての在宅医療です。ですから関わるすべての人に素直に感謝しています。介護施設の患者さんのニーズから生まれた在宅療養支援診療所藤田 さいたまの在宅医療クリニックの特徴をお聞かせください。長尾 私が勤務しているさいたま在宅医療クリニックは、他に首都圏で展開する3つの在宅医療クリニックと、232病床の総合病院によって作られている、地域医療グループの一つです。それぞれが互いに協力、連携して地域の在宅医療に取り組んでいます。私は現在、さいたま在宅医療クリニックと東京在宅医療クリニックを兼務して訪問診療を行っています。基本的には土曜日から水曜日までの日勤と木曜日が当直勤務となっていまして、必要に応じて日曜日も当直勤務になったりします。在宅医療に携わっている医師は、非常勤を合わせて埼玉クリニックで28名、東京在宅医療クリニックで25名います。当直医師は埼玉で14名、東京で16名です。在宅療養支援診療所で、これだけの在宅専門医を擁し藤田 博人氏池袋理数セミナー 代表取締役・塾長【Prole】大手予備校・個別指導塾において27年間講師として生徒の指導に務める。現在は経営・マネジメントを行いながらも自ら現場で指導する事にこだわり、塾長兼化学科・数学科講師として生徒指導を積極的に行っている。他教育機関で講師の育成にも携わっており、中高一貫校の医学部受験アドバイザーとしても活躍。各教育機関にて、医師である保護者の方々から子息・息女の医学部受験について相談を受けることも多い。

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