ドクタージャーナル20号
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13DoctorsJournal認知症であっても穏やかに暮らせるのであればそれでよい。認知症の人をどうとらえるかが重要です。医学的には認知症は治らない病気です。根本的な治療薬ができたら、多少の副作用があっても我慢して飲んでもらうことになるでしょう。しかし今ある認知症薬は進行を遅らせるだけの薬です。副作用を我慢してまで飲む薬でもないし、食欲がないという人に無理やり飲ませる薬でもないと思っています。根本的な治療法がないのであれば他にできることは何か。それは認知症の患者さんに人生を楽しく幸せに生きてもらうことです。穏やかに家族と円満に生きてもらうために関わるのが認知症医療の在り方だと思います。さらには、認知症があってもその人が穏やかに家族と暮らせて、家族もそれほど困っていないのであれば、それで良いのではないでしょうか。病棟においてもその人がそれほど迷惑をかけていないし、普通に治療もできているのであれば、別に認知症があっても良いのではないか。認知症だからとにかく治療するということではないと思います。これからの認知症医療にはそんなスタンスも求められているのではないかと思っています。認知症の患者さんを三次元で見ること。これまで病棟では認知症の人は歓迎されていませんでしたが、2016年4月から病棟で認知症ケア加算が取れるようになりました。チームを作って認知症の人に適切な対応をすれば診療報酬に繋がるようになったので、これからは認知症に対応する医療機関が沢山出てくるでしょう。しかし、そこで認知症をどんどん見つけて、とにかく薬を出せば良いというような画一的な認知症医療が行われたら、困る患者さんが大勢出てくることになるでしょう。医療やケアの現場では、認知症の患者さんを必ず3次元で捉えてほしいと言っています。まず一つ目の次元は認知症のタイプです。アルツハイマーなのか前頭側頭型なのか、それともレビーなのかという認知症のタイプです。次の次元は認知症の時期です。初期なのか中等度なのか重度まで進んでいるのかという現時点の認知症の時期の次元。三つめの次元が発症年齢です。若年性なのか随分と高齢なのか。この3次元の視点から、今この患者さんはどの状態に位置づけられるのか。そこに介護環境も加えて、その中で医療・ケアの答えを見出してゆく。アルツハイマーというと単にアルツハイマーの認知症薬を出すだけではなくて、患者さんの認知症を3次元的に考えて最も合った治療プランを立てることが大切です。「認知症らしさ」を見つけるためのテストを開発する。認知症診断の前に必要な、認知症初期症状のスクリーニングや診断プロトコルを作る。一般的に認知症の診断基準としては、改定長谷川式簡易知能評価スケール(HDS−RとMMSE)ミニメンタルステート■認知症の最前線で活躍するドクター

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