ドクタージャーナル20号
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16DoctorsJournal生かすのが医療の使命だと思っている医師がいまだに多いように感じます。延命治療で患者さんが長く生きるほど、医師としての責務が果たせたと思っている。しかし、される本人は本当にそれを望んでいるでしょうか。同様に、親に胃ろうや延命治療を望む家族もいます。しかし、自分の時にはしないで欲しいと言う。これもおかしい話です。本人のためにというよりは、世間体とか親族からの叱責とかを気にして、親を延命させようとする家族が多い。まだそのような価値観が、日本の医療や世の中に多いように感じます。長寿を目指す医療だけが独り歩きしてきた日本の歪。長生きさせる医療を進めるのであれば、同時に長生きしても幸せに生きていける社会インフラの基盤を作ってこなければならなかった。車の両輪と同じです。しかし、長寿のための医療だけが独り歩きしてきた。現在でも高齢者の貧困問題が深刻なのに、例えば2050年には高齢者の7割が貧困層と予測されています。長生きはしているけど1700万人が貧困層で、そのうち1200万人は生活保護が必要な高齢者という予測データがあります。長生きしているけど幸せではない高齢者が世の中に溢れてくるのです。 このひずみがあるのに、日本は長寿大国などと誇ることはできないと思っています。これからは、これ以上長生きするための研究よりは、長生きした人が如何に幸せに生きていけるかの研究こそが重要ではないかと思っています。長く生きるよりも豊かに生きることへの価値観の転換長く生きること、とにかく長寿こそが素晴らしいという今までの長寿礼賛の価値観を改めるべきではないでしょうか。これからは長く生きることよりは豊かな老後を過ごすこと、長さよりは豊かさを求めるべきではないかと考えます。90歳を過ぎても老後の生活を心配したり、老後に備えて苦しい生活を我慢したりする人生はどこか違う。これからは長寿を求めるよりは、人生を楽しむこと、豊かな人生を生きることに価値観をシフトチェンジすべきと思います。その豊かさとは、次の世代に何らかの形で寄与する生き方にあるのではないでしょうか。高齢者であっても世の中に貢献する生き方が求められていると思います。今一番大切なことは子育て支援今、一番大切なことは子育て支援です。医療財政の面からも、子供を安心して生めて、楽しく育てることができる。元気な子供がたくさん増えていく世の中にしていかなければならないと思います。そうしないと日本は滅びてしまうでしょう。これからは、元気な高齢者が地域で活躍し、地域の子育て支援を行うことが求められてくるのではないでしょうか。―本日は、多岐にわたりお話を頂き誠に有難うございました。ドクタージャーナル編集部―山口晴保氏医師、認知症専門医、リハビリテーション専門医群馬大学大学院保健学研究科リハビリテーション学講座・教授所属学会:日本認知症学会 副理事長日本老年精神医学会 評議員群馬認知症アカデミー代表幹事群馬県地域リハビリテーション協議会委員長[今までの主な研究内容]1.認知症、特にアルツハイマー病の病因・病態の解明と治療法の開発2.認知症に対する脳活性化リハビリテーションの開発3.地域リハビリテーション支援体制の推進4.介護予防の普及・啓発に関する研究[プロフィール]1976年03月:群馬大学医学部卒業1976年04月:群馬大学大学院 第一病理学教室で神経病理学専攻。この間,東大医科研免疫学教室で川村明義教授の元で蛍光抗体法のアルツハイマー病の病理学的研究を開始。1986年04月:群馬大学 医療技術短期大学部 理学療法学科 助教授1990年12月:文部省在外研究員としてハーバード医科大学神経学教室へ滞在。セルコー教授の元で,Alzheimer病の研究に従事。1993年03月:群馬大学 医療技術短期大学部教授1996年10月:群馬大学医学部保健学科教授 神経学や神経解剖学を担当。1998年01月:オランダライデン大学医学部のアルツハイマー病研究担当の客員教授。オランダ型遺伝性アミロイド性脳出血の研究を指導。[テレビ出演]・NHK:「ためしてガッテン」「ご近所の底力」「クローズアップ現代」    「NHKスペシャル」・NHK Eテレ:「ここが聞きたい!名医にQ」「福祉ネットワーク」「きょうの健康」・テレビ朝日:「たけしの家庭の医学」他[主な著書]・「紙とペンでできる認知症診療術 - 笑顔の生活を支えよう」 協同医書出版社 (2016/6/8)・「ポケット介護 楽になる認知症ケアのコツ - 本人も家族もそろって笑顔に」 技術評論社 (2015/9/25)・「認知症予防─読めば納得! 脳を守るライフスタイルの秘訣」 協同医書出版社 第1版(2008/9/1) 第2版 (2014/2/1) ・「認知症にならない、負けない生き方 」 (日本屈指の名医が教える「健康に生きる」シリーズ) サンマーク出版 (2014/11/25)・「認知症のリハビリテーション‐笑顔が生れる実践的アプローチ‐」 (MB Medical Rehabilitation(メディカルリハビリテーション)) 全日本病院出版会 (2013/11/27)・「認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント 快一徹!」 脳活性化リハビリテーションで進行を防ごう 協同医書出版社 第1版(2005/6/6) 第2版 (2010/4/9)

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